今年の夏休みを利用して、研究室の皆さんと一緒に中国の東北に行ってきました。
中国東北地方は歴史的に見ても各国の植民支配を受け、複数の施政者が支配し、それに伴い多種多様な人種が居留をしていた。今回は大連と瀋陽にある日本人支配時代の集合住宅を対象としてフィールドワークを展開しました。
最初に大連国際空港に着いて、タクシーでホテルに行く途中に意外と短い距離だが、いくつかの大きな広場を見ました。
そして、普段中国の北の都市とは思わないぐらい緑が多いです。
大連の中心部にある中山広場や人民広場などの周りに当時日本人が造られた銀行やホテル、市役所などがいまだに残されています。それらの建物が重要文化財としてきれいに保存されながら、大手銀行や企業に借りて使用しています。
大連中山広場にある当時のヤマトホテル 大連中山広場にある当時の大連市役所
(現在もホテルとして使われている) (現在中国工商銀行です)
大連中山広場のパノラマ写真です
大連には20世紀初の時に建てられた公共建築が多く残されている一方、満鉄の社宅やアパートメントも思ったより残存しています。
今回見に行ったのは沙河口にある満鉄の社宅地区です。大連駅の西にある沙河口地区には、満鉄の鉄道用車両を作る工場があり、その工場の職員のために住宅を作ったと思われます。また、当時大連の中心部に離れていることから、この地区に学校や図書館、商業施設、お寺、神社まで生活に欠かせない建築を揃えました。実際に現地に見てみると、住棟間の距離が遠く、ブロックとブロックの間にも樹木が多く植えています。
道路も広く、真ん中に散歩用の細道が付いている緑道もあります。住宅のレベルも高く、当時にもすごく住環境のいい住宅街だと考えられます。
沙河口にあった満鉄社宅アパート 中庭の付いた階段式アパート
この地区の地形は坂地になっていて、低いところにお寺と集合住宅のアパートを配置しましたが、地形の高いところに学校と課長レベルの戸建て住宅を建てました。
管理層の戸建て住宅 当時沙河口小学校(現在は中学校)
大連にある満鉄の住宅や建築を見てわかるように、すごく質が高いものでした。
一方、当時の中国人エリアはどうなっていたでしょう。実際に見ると、日本人建築と比べると遜色しないくらいのいい建物が多いです。実は、私たちも当初ここが中国人エリアだとわかっていませんでした。
まず、道路のすぐそばにある建物です。このエリアの建物はほとんどこのような2,3階の煉瓦造です。
かつて“小崗子”と呼ばれたこの一帯は、ロシア~日本統治時代の中国人の居住エリアです。
主に山東省から大連に流入してくる労働者たちの暮らす地域でした。
現在は一般に「東関街」と呼ばれています。大連で最初に中国人自身の手でつくられた住宅街とも言えます。
このエリアに着いたとき、いきなり古い路面電車が走ってきました。この市内を走る路面電車は1909年日本統治時代に開通しました。車両は2色、赤と緑がありまして、当時緑の車両は日本人と一部の中国人しか乗れない電車であり、赤の車両は中国人専用だったそうです。
道を渡って、奥に入るとまるでタイムスリップしたかのようです。
日本統治時代、この一帯では中国人による商売も盛んで、町は賑わいを見せていたという。
大連の老舗と言える店は、皆この辺りが発祥の地でした。
しかし、残念ながらこのエリアは今年で全部取り壊し予定です。全然調査をしてないうちにもう壊すのはとてももったいないと思います。
このあたりには遊郭などもあったようです。
真剣に見ている三人(金谷さん撮影)
調査の後半は大連の北にある瀋陽市に移動しました。
瀋陽駅と中山広場とその周辺にある1930年代の建物が保護対象として残されましたが、あまり状態が良くないと感じました。
昔の奉天駅を増築して現在も使われている瀋陽駅
瀋陽市はもともと奉天と呼ばれています。奉天は、満州最古の都で、かつて三重の城壁で囲まれていました。
満州国は奉天に大規模な都市建設を行い、城外と城内の区画整理が進められました。
近代地図と現代地図を比較してみるとわかるように、満州時代の街区がそのまま残されたが、当時の建物がほとんど建て替えられました。
また、瀋陽は近代から張作霖という軍閥が支配され、後から来た日本人も占領できる地区が限られていました。そのため、1930年代の日本人が建設した建物が駅周辺の付属地に集中していたと思われます。
満鉄の社宅や住宅地があまり見ることができませんでしたが、張作霖の帥府や瀋陽故宮をしっかり見学できました。
瀋陽故宮の大正殿とその儀式の空間
今回の中国東北調査は、皆で毎日中国料理を食べて元気よく調査ができました。
いろいろ資料で得られない情報をフィールドワークに通じて手に入れ、とても有意義な調査だと思います。
一緒に調査へ同行してくれた高村先生をはじめとしたみなさまありがとうございました。
M2 常亜捷
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